電磁波障害には2つのケースが考えられます.
放射性電磁波と伝導性電磁波です.放射性電磁波は空間を伝わる障害波であり,伝導性電磁波は電源などからの線から伝わる障害波です.伝導性電磁波の場合は加法雑音となりますので機器から出ているケーブルにフィルタを設けることにより取り除ける場合があります.
電磁波を出さないことそして電磁波によって悪影響つまり誤動作をしないことを意味します.概念的なものですが開発した機器が電磁波を出さず,電磁波が来ても問題ないということは”良い製品が出来たね”と言うことになりますね.
機器から出る電磁波を指す場合もありますし,逆の意味もあります.
主にVCCI等の試験はEMIだけとなります.試験状況は一般的に機器から10m離れた場所にアンテナを立て,機器を動作させている状態でそのアンテナに入る電磁波を調べることで行います.ちなみに3mで測定する基準もあります.
規格としては 30 - 230MHz までは 30dB 以下,230 - 1000MHz までは 37dB 以下の電磁波強度でなければなりません.もっとも規格にはさらに2つあり,一般家庭では問題が若干あるから注意してねとされる VCCI-A の場合は規格が 10dB 緩く(つまり 40dB と 47dB )なります.
もっとも私の所属している会社ではその規格より -3dB 以下であり,3台の測定結果が必要になるので少々厳しい感じがしますが,それだけ完成度の高い製品を目指しているということですね..でも少しくらい緩くしてくれないかなぁ(笑)
測定方法は機器をターンテーブルといって360度回転するテーブルを使用し,そのテーブルの高さ80cmの所に機器を置きます.実際に機器を動作させてテーブルを回転させもっとも電磁波の強い場所を探していきます.このときアンテナの高さは1mから4mまでの範囲で動かしていきます.大抵はアンテナの向きを垂直にした場合高さ1mのところが又アンテナを水平にしたときは高さ4mのところが一番電磁波が強く出ると言われており,その状態で最初探りを入れていきます.
探り方も色々有るようですが,まずは垂直1mのところでテーブルを360度ターンさせその時の電磁波をスペクトラムアナライザでピーク値を出します.次に水平4mも同様に行い,その時のピーク値が規格を満足しているかどうか,一番電磁波が出ている周波数やテーブルの向きはどうかなどを見て問題ある時には...もう大変です(^^;;
どこが悪いのかをあっちこっち探りながら調べていくのですが,これは経験者でないと非常に難しい作業になります.
また実際にはピーク値でなく平均値を算出するようなレシーバーを用いて測定します.つまりピークでは規格を越えていても,レシーバーでは規格を満足する場合には VCCI とてしては問題がありません.この辺がまた経験的な部分がありますので,2回ほど実際に自分で計測をしてみると分かるとおもいます.チャンスがあったらぜひやってみることをお勧めします.
一度200MHz以上で規格を満足しなかったとき非常にこまり,さてどうやって落としたら良いかを散々迷ったあげく問題だったのはイーサネットのシールドケーブルがアンテナになって電磁波を出していたというときがありました.この時は受け側の機器がシールドタイプでなくGNDが浮いていたのが原因だったので,アンシールドケーブルを使うと嘘のように高周波電磁波が無くなったのを覚えています.
シールドケーブルはノイズに強いという固定概念があったのですが,非常に初歩的な事を勉強させられる一件でした(^^;;
測定場所としてはオープンサイトと言われる本当に山の中のような場所,つまりラジオやTV等の電波の届きにくい場所で,そとにアンテナや計測器を出して測定する方法と,電波暗室といってビルの中にまったく電波が入らない状態を作り出して測定する方法があります.無論オープンか電波暗室かでは利用料金が違いますし,また測定の大変さも違います.オープンサイトの場合には利用料金は安いのですが,いろんな電波が飛び交っていますのでもしその部分に機器の電磁波が来た場合切り分けなどが大変です.電波暗室の場合には測定は切り分ける必要が無いため楽ですが,利用料金が高いという面と電波暗室自体あまり無いのでいつでも予約が埋まっていると言う問題があります.
私は会社に電波暗室がありますのでいつも電波暗室で測定していますが,一人暗い中夜中などに測定をしていると非常に寂しいものがあります...また一度だけオープンサイトでやったときは冬だったので非常に寒い思いをしたという思い出があります.
さて今までのは空中による電磁波障害ですが,あと1つ線を通じて伝わる伝導雑音試験というのがあります.これは電源などの線を伝わって電磁波が漏れていかないかを調べる試験です.最近の機器は電源自体を購入するケースが多いのですが,大抵の場合電源側で雑音が伝わらないように対策を施しているケースが多いので,問題が出たという経験は私にはありません.人に聞くとこの試験で問題があるようなら(製品開発を)止めた方がいいとまで言われるようです(^^;;
試験方法は非常に簡単で一面金属の板が貼って有るシールドルームという場所で疑似電源回路網に電源ラインを入れ機器を動作させ,疑似電源回路網から電磁波雑音がどれくらいあるかをスペクトラムアナライザで調べるだけです.これも最初はピークを調べ,あとはレシーバーという機器で丁寧に高い電磁波が出ている周波数の強度を調べていきます.実際の値はレシーバーの測定値になり,ピーク値ではありません.これは放射雑音の測定と同じです.
さてこれでうまくいったら書類をまとめ,機器の構成図を書き,データを添付してVCCIに提出します.これで終了です.
しかしながら世の中そう甘くないもので,実は市場抜き取り調査と称して,登録された機器をランダムに選び,市場で販売している機器を測定し規格通りかを確認します.もし規格外の時は登録したメーカーを呼び,実際に再度メーカーに立ち会いの元で再測定を行います.これで問題あるときは.....もう大騒ぎになるんじゃないでしょうか??
さすがにこの部分は経験がありません.やってこないことを祈るしかありません(笑)
電磁波が機器に来ても誤動作をしない能力を指す言葉です.このイミュニティは3種類の試験を行いますが,いずれも雑音を印可した際,被試験機器に問題が起こらないことを確認します.
このイミュニティの試験はCEマーキングの宣言の為に行う必要があります.
FTBは電源およびネットワークの線に雑音を加えて誤動作しないことを確認する試験です.
雑音は電源ラインの場合約1000Vのインパルス性の雑音を加え,ネットワークの場合500Vのインパルス性雑音を加えます.この時雑音の向きは,+−両方に加えます.特に私が試験を行ったときは問題もなく,電源におけるフィルタがしっかりしてれば,問題はほとんど出ないようです.
またネットワークもLAN等はディファレンシャルの信号なので,雑音は打ち消されるようになっていますから,問題がおこるほうが問題です(笑).
私が社内設備で行ったときは特に問題も出ませんでしたので,約2時間かからずに済みました.
見た目は結構強烈な試験かもしれません(^^;.
約8Kvの静電気を被試験機器に向けて与え(この時冬に良くおこる静電気のようにバチィって音がするんですよぉ),誤動作しないことを確認する試験です.金属部分で且つ人間が手で触れそうな部分に静電気を与える機器(なんかGUNの様な感じです)で,一カ所につき10発以上の静電気を与えていきます.
これも被試験機器におけるGNDや絶縁がきちんと行われていれば問題が無い試験となります.
あとは金属板の上に被試験機器を置き,金属器板の縦横4カ所に静電気を印可し,問題の無いことを確認します.
問題のレベルはいろいろあるようですが,リセットがされたり,リセットをしなければならない状態にならなければいいと言われました.
試験中は動作確認のために種種のインターフェースをアクセスするプログラムを流していますが,それが問題なく動いていればよしとなります.
電磁波を27MHz〜500MHzの間被試験機器に対して放射し,問題の無いことを確認する試験です.
電磁波を1MHzごとに変化させ,水平および垂直の電磁波を,0,90,180,270度の4箇所の角度にて確認を行います.
27MHz〜500MHzまで順に Power を確認しながら(3W程度)行いますので,1つ試験をするのに1時間半から2時間程度かかります.(2時間と言っても自動で測定する機器があってのことです.マニュアルで確認をしていくとたぶん途方もなく時間がかかると思います)
社内の施設では自動的に各条件に合うようにアンテナの位置や被測定機器の位置等をGPIBで制御しますので,実作業としては段取り換えと問題が起こらないかどうかモニタをじっと見ていることです.
結構モニタだけを見ているものつらいものがあり,1秒間に1コマとれるVTRで記録してあとで検証する様にしてもらえるといいなと思ったりもします.
この言葉は電磁波にどのくらい機器が敏感に反応するかを意味するものです.つまりイミュニティ試験に敏感に反応するような機器はEMC的にすぐれているとは言えません.逆に鈍感ならばEMCにすぐれていると言えます.これは言葉としてあるだけで試験内容とはあまり関係ありませんが,EMIが少なく,イミュニティに強く,感受性が低い製品は理想的なEMC対策をしている製品であると言えます.